第1章

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「提案資料によると、沢口君としては、ターゲットは20代後半から30代の男性をイメージしてるのね」 「はい、横井さん」 「ほんと、いいとこ、ついてるわね。バブル時にいた男性はもう古いわね。やっぱり、いつの時代にも通じるのは、きちんと自分の哲学をもった男性よ」 「哲学かあ、その表現もカッコいいですね」  さすが、横井さんの表現は的確で上をいっていると思った。  会社のことならなんでも知っている、陰のご意見番だ。主任の大先輩で、『困った時の横井さん』とみんなが言うほど、マーケティング課での横井さんへの信頼は厚い。  俺もこの人のおかげもあって会社のイロハを学んだと言っても過言ではない。 「アラサー男性と30代の男性ってことだな……うん、沢口君、いいねえ」  30代にして早くも主任に昇進した溝口主任も非常に納得といった感じで頷いている。 「沢ちゃん、もしかして、俺をイメージした?」    森山先輩はかろうじて20代。来年三十路(みそじ)なりショックだと騒いでいたのが最近のこと。 「森山君、思ってても自分から言わないのが男の美学よ!」 「ですよね、横井さん」白鳥先輩と横井さんの掛け合いに笑いが起こる。 「横井先輩にはかなわんわぁ」  とこんな具合で和気あいあい。  でも、まとめるときは、ビシッとまとめるのが1係の良さなのだ。    新商品「男が惚れる男へ」  商品名「フォーリン・ラバー」  香りは、シーンに分け、ビジネスシーンでの軽いシトラス系。プライベートならオリエンタル系の2種類  ターゲットは20代後半から30代の男性とし、モデルを起用しての広告やデパートなどの取引先へ売り込みを展開する。 「森山さん、沢口君は、取引先プレゼン用の資料作りを計画してください」 「はい、わかりました」 「横井さんと白鳥さんは、CMモデルの起用計画をお願いします」 「はい、主任」 「私は、取引先や広告会社に事前告知をしておきます」  新商品を売り出すマーケティング戦略開始。  自分が提案したキャッチフレーズを掲げ、1係総出でその幕が切って落とされた。  
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