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二人の間を、雪がちらりと舞った気がした。
雪……?
と少しだけ気を取られた。
「俺は……おまえのことが……好きなんだ…… だから……」
今、何て言った……?
聞き慣れない言葉は、耳をさらりと通り過ぎて、寒空に消えていった。
聞き間違いじゃなければ、今俺を好きって言った?
心臓は激しい速さで鼓動し、頭の中で大音量を鳴らしている。
「今、よく聞こえなかった……」
もう一度はっきりと聞きたい。
ちゃんと聞きたい。
葉山の口からもう一度——
誰かに言われたいとずっと願っていた言葉。
葉山は、間を置いてから、真っ直ぐに俺の瞳を見た。先ほどよりも強い意思みたいなものを感じる。
「だから……俺は、おまえのことが、好き。ずっと好きだった!」
心が震えた。
力強くて、でも、温かくて優しい響きだった。
胸の奥から熱い何かが沸き起こり、体全身に染み渡っていく。
『好き』という言葉はこんなにも、切なくて、すぐ逃げてしまいそうなくらい儚くて、なのに、凍えた心を熱く焦がす。
「だから、つい…… ごめん。気持ち悪いよな……俺のこと」
そうじゃない。
え?
俺は、葉山のことを気持ち悪いとは思っていない。
だって、ずっと、あのキスを俺は……
「じゃあ、なんで……!」
熱が体を巡り、目頭まで迫り上がる。
雫が熱く瞳を覆って、次第に葉山がぼやけていく。
「なんで、俺にイジワルしてたんだよ……」
「イジワル?」
「ああ……、おまえ、今まで俺には優しくなかったじゃないか!」
「そうか、そうかもな……。俺、どうもさ、素直になれなくてさ…… だから、そんな自分にいつも落ち込んでた」
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