第8章

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「あ、ちょっと、まっ……あっ」  不意に首筋に葉山の唇が滑り、一瞬ヒヤリとして、ゾクっと体が震えた。帰ってくるなりコートを脱がずに、二人玄関先で立ったまま、暖房も入れてない。 「だ、暖房つけなきゃ」  そう言いながら葉山をやっとのことで押し剥がし、リモコンを探す。その後を、まるで子供が母親を追いかけるように葉山が抱きつこうとする。 「ちょ、待って……」  逃れながらやっとリモコンを見つけ出し、スイッチを入れたら、すぐにまた覆い被さるように後ろから抱きしめられた。 「もう、おまえって……」 「沢口……好き……」  その言葉は、反則だ。    がっつき過ぎ……とでも言おうと思った。  でも、耳元でそんなこと言われると、文句の言葉は消えてしまう。  今まで、こんなふうに言われたことがないからだろうか。  「好き」という言葉は、すごい言葉だと思う。  真っ直ぐに言われるとなんでも許したくなる強力ワードだ。  胸がこんなにもときめいて、熱くなる。    何度でも言って欲しい。  それが、好きな相手なら尚更……    そうか——   俺も葉山が好き……なんだ。    強く抱きしめられて温かさが心地よくて  キスされても全然嫌じゃなくて  ずっと、胸がときめきっぱなし。  その意味が、今わかった瞬間だった。 「葉山、コート、脱ぐから……」 「ああ……」  その間、葉山の腕が解かれ、後ろから葉山が見ていると思うと緊張気味にコートを脱ぎ、コート掛けにかけた。 「おまえも脱げよ……」 「うん」  後ろを振り返り、葉山からコートを受け取ろうとすると、葉山は即座にソファーに投げかけ、また抱きついてきた。 「沢口……」 「ん……」    2度目の口づけは、待ち遠しい思いが溢れた。  自分からも求め、唇を重ね合う。葉山もそれに気づいたのか、激しさを増して、口づけを求めてくる。    熱く吐息を絡め合う。  互いの気持ちが、ひとつになった気がした。  
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