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どれくらい長く口づけ合っていたのだろう。誰の唇なのかわからないような感覚。
誰からともなく離れ、口づけの余韻に浸りながら吐息を交わす。
「沢口…… いい……?」
葉山は、遠慮深かげに、俺のシャツの一番上のボタンに指先をかけた。「えっ!」
これから先に進もうということなのだろう。その表情と仕草で、すぐにわかった。
ここからは、ちゃんと俺の同意を取ってくれるんだな。
甘く潤んだ瞳。子犬みたいだ。
カッコいいだけじゃなくて、葉山って案外かわいいところもある。
誰にも見せたくない。
今、自分だけが独占していることがよけいに気持ちを昂らせる。
だがしかし——
一方では、やっぱり来たかという不安がごっちゃになる。
こんな濃厚なキスをしたら、その先、恋愛ドラマだとそれだけでは済まないはずだ。
でも、最初からそういうことを予想して行動できるはずはない。
普通は、成り行きってもんだろ……
予想しながらできるやつがいたら、そいつはよほど慣れているに違いない。
「えっと……」
お互い好きなら、触れ合いたい…… そう思うのが普通で、それが、男同士であっても、同じなんだろうと思う。
ただ、この先は未知の世界だから不安が大きいのも確かだ。
つい最近まで、自分には関係ない世界だと思っていたのだから、何をどうしていいのかわからない。
同性同士のカップルが公認される時代で、自分は、べつに賛成でも反対でもない。
当事者同士幸せであればいい……くらいに思っていた。
それがまさか、葉山とこういうことになるなんて……
未来って何が起こるかわからないものだ。
BLって言ったけ……
そういうたぐいの恋愛映画とか漫画とか普段から見ておくべきだった……
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