259人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「イヤ……かな……? 沢口がイヤなら無理には……」
イヤじゃないけど…… 怖い。
「そうじゃなくて…… ただ、そういうの……初めてで……怖いっていうか……」
「そうだよな……俺、急ぎ過ぎたよな…… がっついてごめん。おまえのことになると俺…… 理性がきかなくて……」
と葉山の指先が寂しそうに胸元を滑り落ちていく。
「待っ……」
俺の方から葉山の袖口を掴んだ。
「ボタン外せばいいのか……」
「沢口……」
驚いた顔の葉山の前で、俺はネクタイをスルスルと外し、自分の胸のボタンに手をかけ外そうとした。
「おまえは何もしなくていい——」
と葉山の手が自分の手を握り止めた。
「葉山、お、教えてくれるか……」
「沢口、大丈夫だから。俺は、おまえに触れるだけでいいんだ。怖いことはしない。おまえを気持ち良くしてあげるから……」
気持ち良くって?
葉山は?
初めてのことで、何がどうなのかわからない。
「沢口……」
「葉山……ん」
熱い唇が塞ぎ、胸が震える。
俺も葉山に触れたい——
そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!