第8章

11/15

259人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「イヤ……かな……? 沢口がイヤなら無理には……」    イヤじゃないけど…… 怖い。 「そうじゃなくて…… ただ、そういうの……初めてで……怖いっていうか……」 「そうだよな……俺、急ぎ過ぎたよな…… がっついてごめん。おまえのことになると俺…… 理性がきかなくて……」  と葉山の指先が寂しそうに胸元を滑り落ちていく。 「待っ……」  俺の方から葉山の袖口を掴んだ。 「ボタン外せばいいのか……」 「沢口……」  驚いた顔の葉山の前で、俺はネクタイをスルスルと外し、自分の胸のボタンに手をかけ外そうとした。 「おまえは何もしなくていい——」  と葉山の手が自分の手を握り止めた。 「葉山、お、教えてくれるか……」 「沢口、大丈夫だから。俺は、おまえに触れるだけでいいんだ。怖いことはしない。おまえを気持ち良くしてあげるから……」    気持ち良くって?  葉山は?  初めてのことで、何がどうなのかわからない。   「沢口……」 「葉山……ん」  熱い唇が塞ぎ、胸が震える。    俺も葉山に触れたい——  そう思った。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加