第8章

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 ベットに腰掛け、唇を重ねながら、葉山の指先がシャツのボタンを一つ一つ外していく。  キスをし、ボタンを外され、またキスをする。  葉山の長い指先を眺めながら、俺は身を委ねた。  唇を重ねてはすぐに離れていくキス。物足りないくらい短くて、それなのに、自分を何か大切なもののように扱ってくれているようで、甘くて、とろけてしまう。    でも……  少し、焦ったい——  時間をかけて、自分を気持ちよくしてくれるというのだろうか。  先ほどまで、あんなにがっついていたのに、今は真逆で、こっちが焦らされているみたいだ。  早く触れたいのに、触れてもらえないもどかしさ。  不思議と怖いという気持ちはもうどこかに行ってしまっていた。  やっとシャツのボタンが解かれた——    と思った瞬間、  肌着ごとシャツをさっと脱がされ、ベッドに押し倒された。 「ちょっ、いきなりっ!」    葉山がフッと笑みをもらし、ベットに両腕を立てた。  仰向けになった俺に覆い被さるようにして上から見つめている。  サラサラな黒髪が額を覆い、柔らかな光に満ちたその瞳に目が離せない。   「な、なんだよ……」  男にまじまじと裸を見られて、こんな気恥ずかしいなんて思ったことなんか今までにない。 「沢口…… 胸、キレイ……」 「はあっ! そんなに見るな……恥ずか……ん」  言葉は最後まで言えないまま葉山の唇に呑み込まれた。  久しぶりの深い口づけに溶かされ、動けなくなっていく。    唇が一時遠のき、葉山は急いでシャツと肌着を脱ぎ捨てた。露わになった厚い胸板。  シャツの上からはわからなかった。  筋肉質の二の腕。  俺は、腑抜けになった体で、うっとりとただ見つめていた。
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