第8章

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 何も着ていない不安定な体に、葉山の温かな肌が重なり、ぶるっと震えた。  互いの肌が(こす)れ合い、葉山の温もりが胸の奥まで沁みてくる。 「沢口……」 「は、やま……」  葉山の唇が首筋を這い、鎖骨へと滑りながらたくさんの口づけが落とされる。  唇が寂しくなるとタイミングよく塞がれ、吐息を奪われ、口腔内を熱くまさぐられる。  自分の体の全神経が、快感を敏感に捉え、今、ただそのためだけにあるかのようだ。葉山の行為ひとつひとつ全てが俺の体を喜ばせ、心を満たしていく。   「あっん……」  胸の尖りを葉山の唇に()まれ、上体が揺れ、ベットがシンクロした。    思わず出した声が、驚くほど艶めいていた。  官能的で、耳を疑う。  自分とは思えない、聞いたことのない声。    恥ずかしい……    口元を抑えようとした手を剥がされ、心地良すぎる愛撫に、意識は遠ざかっていく。  女とは違う、なんにもない真っ平な胸を葉山の手が嬉しそうに何度も行き来する。  指先で摘ままれ、揉まれ、尖りを舌先がえぐり舐め、執拗に吸われ、そのたびに体をうねらせる。  その間、自分の悦楽の声を意識の遠くで聴きながら、狂ったように葉山の髪の毛をもみくちゃにした。  次第に体の中心が燃えるように熱くて、ジンジンと脈打ち、痺れていく。  これは、いつも一人で処理していたとき感じるあの感覚に似てる。    ……まさかっ! 「良かった……こんなに固くなって……」 「ああっ……ちょっ、まっ」    そのまさかだった。    いっ!    目線の下に露わになった自分の(おす)にギョッとした。  下半身から剥き出しにされた自分の雄が、葉山の手の中で猛々しくそそり立っている。  目を逸らしたくなるほど、自分のものが大きく肥大して何かを待ち望んでいる生き物のように見えた。 「は、ああぁっ、あっ」  葉山の手で熱くしごかれ、絶頂へと導かれていく。  なされるがまま、力が入らない。  ゾワゾワと体の中心から背筋を走り全身へと電気が走る。    もうダメだ、イク——  快感の波が頭上に押し寄せ、全身へと弾け飛んだ。  心臓は飛び出しそうなほど高鳴り、体から熱い何かが放出されていく。  自分でするのとは違う、充足感。  今までにない、甘美な悦びで満たされていた。  鼓動が落ち着くのを聴きながら、心地よい余韻の中に身を任せた。
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