第8章

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「沢口……気持ちよかった?」 「う、うん……」 「良かった……」 「お、おまえ……それ……!?」  両肘をつき、脱力した上体をゆるりと起こすと、俺に(またが)り、太く固くしなっている葉山の雄が見えた。    葉山のものは、獲物を欲しそうに行き場を失ったままそそり立っている。  自分だけが気持ちよくなっていいのだろうか。  無条件に自分を気持ちよくしてくれた葉山を今度は自分が気持ちよくしてあげたい。   そんな些細な思いでも喜んでくれるのなら、俺は…… 続いて浮かんだのは、『嬉しい』という言葉だ。   「自分で処理してくる…… 大丈夫だから……」  と葉山はベットから離れようとした。 「待てよ。俺も、おまえがしたようにしてやるよ」  自分も葉山を単純に喜ばせたい。ただそれだけで気持ちが突き動かされていた。 「え! いいって、沢口、俺はおまえが気持ちよくなってくれればそれで……」 「俺だって、葉山にも気持ちよくなってもらいたいかさ……」  と葉山の腕を掴み引き留めた。 「沢口…… じゃあ…… 仰向けになって、俺のものを両太ももで挟んでくれるか?」 「え?」    何をどうするのか、葉山に言われたとおりに、固く猛々しく大きく膨張した葉山の雄を、俺の両太ももの間に挟み込んだ。 「さ、さわぐち……もっと、ぎゅっと、はさんで、あ、少しだけ緩めて……そ、そう、そのまま……うん、いい……あっ」  葉山は、最初は大きくゆっくりと動かし始め、次第にピッチを上げ腰を上下に激しく動かしている。  葉山の律動に、ベットがギシギシと激しくバウンドする。俺は、ベットの上で共に揺れ、激しく腰を揺らしながら喘ぐ男の顔をじっと下から眺めていた。  首を左右、上下し、快感に身悶える葉山の顔。  首筋に滲むフェロモンが漂うような汗の玉。  普段と違って、葉山の声は、セックスの時は、案外ハスキーボイスで、淫らで……  その全てが、男の色香を漂わせている。  もう癒えてしまった自分の体の中心から、熱がまたむくむと帯びそうになり、葉山にキスを浴びせたい衝動にかられる。 「あ、ああっ——」  葉山は、絶頂の声を俺の心に響かせ、俺の腹上で果てた。  静かな部屋で二人の呼吸が交わる。  汗が粘着剤のように肌と肌を密着させ、互いの熱が冷めるまで、そのままの姿勢で時を刻んだ。
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