第8章

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 今何時だろう……  だいぶ時間が経った気がする。  枕元の時計は23時58分    まだ、間に合う——  そう、今日はクリスマス。  いつか自分に愛する人ができれば、一緒に過ごしたいとずっと憧れていた日。  自分の心に寄り添ってくれる人がそばにいて、一緒に迎えるクリスマスはどんなにか幸せだろう。そういう夢を描いてきた。    それが今夜、思いもしない形で叶った。   「葉山、メリークリスマス……」  一度は言ってみたかった。幸せな時間を一緒に分かち合う言葉。ベタで、子供地味ていると笑われても言ってみたかった。 「あっ、そうだっ、まだ2分。間に合ったぁ! うん、メリークリスマス」  笑顔で返ってきた素直すぎる言葉に胸が熱くなる。    どうしてずっと合わないと思っていたのだろう。  こんな近くに心から幸せを分かち合える相手がいたとは……    先ほど降っていた雪は積もっているのだろうか。  初めてにして、心がひとつになった人と迎えられるクリスマスがホワイトクリスマスとは……なんて贅沢なんだろう。    2分後迎える明日は、どんないい日になるだろうか。 「沢口、その……ところで……おまえの気持ち、まだ聞いてない……」 「はあ、今更なんだよ……」  体制を変え、葉山を押し倒し笑顔で見下ろした。 「沢口……」  俺は、葉山の唇を塞ぎ、思いを届ける。  ありったけの思いを込めて……。
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