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「葉山っ、遅れてゴメン」
人混みの中から葉山を見つけた。息を切らしながら、葉山のそばに駆け寄る。
今日はバイクは自宅に置いて来たからと、待ち合わせは地下鉄の入り口付近になった。
「横井さんと白鳥先輩につかまっちゃって、なかなか出られなくて、ゴメン」
仕事納めの打ち上げに少しだけ顔を出して、葉山が先に帰り、しばらくして自分が帰るという時間差計画だった。
「これくらい待っても気になんない。人を待つのって、俺、全然、嫌いじゃないからさ……」
「そっか……」
クリスマスのあの夜から、今まで歪んで見ていた葉山はそこにはいない。返してくる言葉ひとつひとつが優しくて、彼の人柄の良さを少しずつ発見することが嬉しくなる。
「沢口、飯食う? それとも、どっか行きたいところある?」
「俺は、さっき打ち上げでいっぱい食ったから、お腹いっぱい。おまえは?」
「俺も、腹いっぱいだよ」
「じゃあ、そうだな……」
すぐに浮かんだ場所は——
恋人ができたら、いつか行ってみたいと思っていたあの憧れの場所。
うん、そこにしよう!
「東京タワーに行きたい!」
素直にはっきりと口走った。
でも、思い切って言った手前、あとから、葉山がどう反応するのか、少しだけ怖くて、顔色を伺った。
人によっては、スカイツリーと比較して格下げするヤツがいるし、ベタなデートコースだと笑うヤツもいるからだ。
それに、歪んで見ていた以前の葉山じゃないってわかっていても、まだ、葉山のことを全部知ったわけではない。
葉山と深い関係になってまだ3日しかたっていないのだから。
「東京タワーなんて、田舎もんの行くところだよ」と、以前のように憎まれ口を言われないかと少しだけドキドキしていた。
「へえ、東京タワー…… いいじゃん! スカイツツリーができてから、俺も久しく行ってないから…… うん、いい、行こう!」
良かった!
やっぱり、これがホントの葉山なんだ。
自分と同じ感性で、心から一緒に楽しんでくれる。
笑顔いっぱいで話す葉山が、ますます好きになっていく。
「良かった! じゃあ、そこに決まりっ」
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