第9章

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 部屋に入るなり、互いに激しく求め合う。  初めての葉山の部屋、初めての葉山のベット、葉山の匂いがする。  初めての、全てが愛おしい。    時間をかけて、何度も唇を重ね、口づけ合う。 「あ、ああっ、は、やま……」 「沢口、好き、好き……」  好きと言われるたびに、胸の奥が溢れる。 「俺も、好き、葉山……」  好きと言葉を口にするたび、胸が躍る。    吐息を熱く掠め、体を激しく絡める。貪欲なまでに、互いを貪り求め、快感の波に揺れ合う。   「あ、ああっ」 「沢口、大丈夫?」 「うっ、っん」  体を開き、葉山の全てを受け入れたい。  怖さよりも、好きな人と一つになりたいと強く思う。 「い、いい、はや、ま……」 「沢口……っ」  二つの影が重なり一つになった。  心が一つになる悦びとはこういう感覚なのか。 「葉山、おまえで良かった」 「俺も、おまえと出会えて良かった」    言葉だけでは伝えられない、この思いが届くように……    とろけるような口づけを交わして、心ごと抱き合いたい。    何度でも  力尽きて眠りにつくまで……  そして——  目覚めのコーヒーを一緒に飲もう      The End    おまけ   「あのさ、あのときのキス、俺のってどうしてわかった……?」  行為の後、ベットで横たわる側で、葉山が顔を覗き込んだ。 「それは…… 『男が惚れる男へ』、あの香水……おまえ、あの日つけてただろ?」 「やっぱ、香りを覚えてたんだな」 「あとになって思い出したんだ。そういえば、あの香りがしたなって……だから、おまえかなって……」 「じつはさ、その……正直に言うと、俺、あの香水にあやかろうと思ってさ、香水やたらとつけてたんだ」  葉山は、言葉を選びなら、バツが悪そうに言った。
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