第2章

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第2章

「CM起用の候補者を決めました。今最も女性や男性にも人気のある俳優3名です」  1回目の会議から数日後、候補者が上がってきた。白鳥先輩が書面を配り終え、いっせいにめくる音がミーティングルーム内に共鳴し合う。  そこには、写真やプロフィールや経歴が書かれていた。  来春の発売に向けて、ポスターやテレビCMで大々的に広告するには、年末までに広告契約を行い、マスコミへの発表前までには撮影を終えておく段取りになっている。 「主任、私と白鳥さんで選んだ候補者です」 「どれどれ……なるほど、横井さん、いいイメージの3名ですね」 「今、トレンドの3人です。どう? 沢口君。沢口君のイメージに合いそうな俳優はいるかしら」  真向かいから白鳥先輩の強い視線を感じる。 「そうですね…… あ、このAさんドンピシャです!」 「そう! よかったぁ! その人、横井さん推薦よ。やっぱり、横井さんは鋭い!」 「Bさんも、Cさんもいいんですが、Aさんはまさに俺のイメージ通りです」 「うん、俺もこのAさん好きやわぁ」 「よし、即、決まりだ。横井さん、白鳥さん、さっそく、Aさんの所属会社とCM交渉に入ってください」 「はい、わかりました。主任」 「森山さん、プレゼン資料の進捗状況はどんな感じですか?」 「はい、この俳優Aさんの起用交渉がうまくいけば、1週間ほどで仕上げたいと思っています。な、沢ちゃん」 「はい。頑張ります!」 「よし、それでは、ミーティングはこれで終了します。各自進めてください」    ひと月早くクリスマス商戦が始まる季節。  1係はますます気合が入り、きりっと引き締まっているように思えた。   「じゃあ、沢ちゃん、俺らの進捗状況を確認し合おうか」 「はい」  森山先輩と2人だけミーティングルームに残り、互いに分担したプレゼン資料の確認をする。  俺は、初めての取引先へのプレゼン作成に多忙な日々を送っていたが、プレッシャーよりも、やりがいに満ちていた。
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