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「よおっし、頑張るぞー!」
「沢ちゃん、気合い入ってるなあ」
「プレゼン日が決まりましたからね」
横井さんと白鳥先輩のおかげで、俳優Aの所属事務所とコマーシャル契約の見通しが立った。
その後、横井さんと白鳥さんが取引先数社とアポを取り、プレゼン日程も決まり、俺と森山先輩のプレゼン班は、最終段階に突入していた。
取引先に新商品の仕入れ数を上げてもらうためには、その商品のイメージ戦略がまず大事である。
どんなに良い商品でも、お客さんに手に取ってもらう一段階をクリアーするものであること。それには、イメージ戦略にかかっている。
だから、香水をイメージするキャッチフレーズにその香りをCMでどう売り出すか。購買動向などの統計やお客さんが手に取ってくれそうなマーケティング戦略に具体性を持たせ、それをプレゼンで示し、取引先の心を動かす必要があるのだ。
「主任、明日までには完成できそうです」
「沢口君、そんなに焦らんでいいんだよ。取引先とは来週なんだから」
「はい。でも、早くみんなに見てもらえば訂正箇所が見つかるかもしれないですし……」
「そうか……最近残業続きだから、あまり無理はしないでね」
「はい。わかりました」
パソコンを睨みキーボードを打つ。
いいものを完成させたいという意気込みが熱量を生み、時間が経つのも忘れるほど集中していた。
「沢ちゃん、今日、息子の誕生日なんだ、ゴメン、今日は先に失礼するね」
「森山先輩、気にしないで早く帰ってあげてください。お疲れさまです」
「沢口君、先に帰るね」
「あ、横井さん、お疲れ様でした」
「沢口君、頑張ってね。お先」
「はい、ありがとうございます。白鳥先輩、お疲れ様です」
気づけば、1係は主任と俺だけが残っていた。後ろを振り返ると、2係も3係も残っているのは数人程度だった。
時計の針は、午後7時になろうとしている。
気分を変えて顔でも洗って来ますか……
俺は、ハンディタオルを手に席を立った。
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