地宮成

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 地宮(ちみや)(なる)は困っていた。  地宮の地にてんてんをつけて呼んだら、ぢみやで地味やになる。  名字の地に土偏がついてる分、成に土をつけられて城に見えるらしく、地宮城なんて何となくありがたそうな城の名前で呼ばれたりもした。  せめて、成なんて一文字ではなく、例えば成貴なんてつけてくれてたら、釣り合いが取れていたかも知れないと思う。  そんな風に成は自分の名前は微妙だと常々感じていた。  何かが足りないのか、字面以上に豪勢なのか、よくわからない名前なのだ。  それでも生まれて二十二年その名前で生活してこれば、己の名前に愛着はあるし、今更改名したいとも思わない。  そのよくわからない名前のせいか、成には小さな頃からよくわからないものが見えていた。
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