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俺は自分でも驚く程の手際の良さで岡本家の朝を取り仕切る。
もう染み付いているのだろう。何をしようと考えるより先に身体が動く。
先日はスーパーであれは高い、これは新鮮味に欠けるとブツブツ言いながら買い物に没頭できる自分に気付いて怖かった。
聞きなれたエンジン音がする。
俺や光希よりもずっと早起きし、仕入れに行っていた光之介と秀光が帰って来たのだ。
バッチリのタイミングで味噌汁が出来上がる。
何だか嫌だ。
そしていつもの朝食が始まる。
いつもじゃなかったのは初めの一日だけだった。
その日は皆それぞれに心配して声をかけてくれた。
光之介は明るく『記憶が戻って良かったな』と言った。
渋い顔をしている俺を光希がどこまでも見通せるような瞳で見つめ『お帰りなさい』と言ってくれた。
その時俺は確信した。
光希は俺が記憶を取り戻そうとした理由を知っている。
俺は光希のことをとても慕っていてよく話し、色んな相談もしていた。
今一記憶にはないのだがもしかしたらその事も相談していたのか?
いや、していなくてもきっと光希は気付いている。
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