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翌朝から俺のリハビリメニューが始まった。
グラウンドのような場所を走ってみたり、ボールを投げたり受け取ったり。それはまるで高校のころの体力測定に毛が生えたようなものであった。
「こんなので手術や冷凍睡眠のリハビリになるのかよ」
「その……。平成時代の方の体力のデータが欲しいという研究所の意向もありまして、申し訳ございません!」
チハルが小さな身体を丸めるようにして頭を下げた。ようするに俺は実験動物でもあるってことだ。
なにせ俺自身全く信じられないが、この世界では1200年前の人間が復活したということになるらしい。未来の研究所としてはデータが欲しくてもおかしくはなかった。
ただ、気になることがあった。時折俺のリハビリ風景を見学しに来る連中が、小さな声で呟く言葉だ。『平成クロマニヨン』。奴らはそんな言葉を呟いていく。
「チハル、あのさ。平成クロマニヨンってなに?」
「ええと……。どうしてそれを?」
「俺を見に来る連中が呟いてる言葉、聞こえてくるんだよね。俺、お前らより耳もいいのかもな」
「凄いです、平成時代のひとは優れた聴力も持っているのですね。でもあの、ごめんなさい」
「いや、お前が謝らなくていいけどさ。なんなのかなって」
「それは――」
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