平成クロマニヨン

1/17
前へ
/17ページ
次へ

平成クロマニヨン

「平成クロマニヨン、意識レベル上昇」 「血圧、体温、脈拍。すべて正常値です」  どこからか、冷たく抑揚のない声が聞こえる。  身体が水の底に沈んでしまったかのように重い。  俺は何をしていたっけ? 大学の講義を受けてバイトにいって、それから家に帰ってきて、それで……。 「意識レベルが覚醒値まで到達します」 「よし、平成クロマニヨンを起こせ」  平成クロマニヨン? 聞いたこともない言葉だ。  俺の全身がふわりと浮き上がるような感覚に包まれる。ゆっくりゆっくり、太陽が揺らめく水面まで、あと少し。俺は――
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加