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顔を真っ赤にして俯くチハル。なんてこった。こいつは研究のために進んで好きでもない男に抱かれようっていうのだろうか。
「やれやれ、未来の日本の研究所はとんだブラック企業だぜ」
ため息をついて横になった俺のそばに、チハルが遠慮がちに寄り添った。
「そんでもってお前は、とんでもない社畜だってわけだ。チハル、お前はそれでいいのか? 研究のためにどうこうするなんて納得出来るのかよ」
「それが私の仕事なので。納得とかそれでいいとか、そういう問題ではなく……」
どうにも1200年も年代がズレていると、価値観もまったく異なってしまうらしい。俺は戸惑うチハルに背を向けて言った。
「チハルのことを好きとか嫌いとか関係ないけどさ。実験のためにどうこうとか、する気ないから。おやすみ」
「あ、では違う子を……」
「そういう問題じゃなくて。いいから、チハルも適当に寝てくれよ。幸いベッドは結構広いし、二人で寝てもなんとかなるだろ」
「は、はぁ。では、今日はそういうデータはなしという事で……」
チハルが小さな眉間にしわを寄せながら、左の掌を空中に掲げた。手に埋め込まれた機械から、緑がかったスクリーンが現れる。チハルはそこに手早くデータを打ち込んでいった。
「文明はこんなに進んでるってのに、人権は後退してるんだな。かなしいもんだ」
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