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「こちらがケイスケさんのお部屋になります」
案内された部屋は天井がドーム状になっている、ホテルの一室のような場所だった。ベッドがあり、鏡があり、風呂のようなものもある。
「ベッドのわきに無線があります。何かありましたらそちらからお問い合わせください」
そういってチハルが頭を下げると、一度ちらりと困惑したような視線を向けてから去っていった。すっかり疲れ果てていた俺は、ベッドにごろんと横になった。
暗い天井がのしかかるように重い。かすかにドーム状の天井に切れ間のようなものが見える。
「これ、開くのかな。ええっと、どれだ……。これか?」
ベッドサイドのスイッチをいくつかいじってみると、ゴウンと重い機械が動き出す音とともに天井がゆっくりと開いていった。夜空にはこの世界にきて初めて、何度も見慣れたものがあった。まあるい月である。
「月だけは変わらずに光ってやがる」
ささやかな月光が描き出す影に抱かれ、俺は本当に遠いところに来てしまったんだという思いの中、ほんの少しだけ涙を流した。
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