第3話 弱肉強食な現実

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「あら、入賞だ。やっぱりね」  有栖は呟いた。勿論自分が、では無い。  因みに、弟の尚樹は毎回大賞か準大賞のどちらかを受賞する。だから、他の人に譲るとかで、気が向いたら大きなコンテストを狙うらしい。弟の事だ。書籍化、映画化、ドラマ化。夢じゃないだろう。  有栖は大きなため息をつき、悲し気に天井を見上げた。 さて、その理由を話そう。  話は約二か月程前に遡る。 同じ演劇部の仲間に、隣のクラスの女子がいる。名前を夏川翔子と言う。彼女は一見、親しみ易く思いやり深い印象を受ける。有栖もそうだと思っていて結構仲良くしていた。 翔子も『アスハキミガスター』に登録しているらしい。名前を天織姫(あまおりひめ)で登録しているとの事だった。どうやらかなりの受賞歴があり、人気作家のうちの一人らしい。  有栖は恥ずかしくてとてもじゃないが自分も登録している、などとは言えなかった。 知っているのは、家族だけで沢山だ。自己満足で書き綴っているだけの駄文なのだ。 誰がわざわざ他人様に教えるものか。  断ったのにも関わらず、弟が毎日全作品に星を投げてくれるから当初よりも閲覧数と 応援☆マークは当初よりも三倍に増えたが。当たり前である。弟が登録してから三か月経つのだ。☆は一日に一度しか投げられない仕組みだ。単純に計算しても☆90である。  尤も、閲覧履歴や☆履歴履歴は第三者も閲覧できるので、誰が閲覧し誰が星を投げているのか一目瞭然なのだが。  彼女がどんな作品を描くのか興味があった有栖は、サイト内で彼女の名を検索してみた。すぐに分かった。総合ランキングでいつも10位以内に入っている人だ!  有栖は迷わずファン登録した。人気の秘訣が垣間見えるかもしれない、と思ったのだ。  早速最新更新された作品を読んでみる。その作品は中国王朝のお話で、貴族の不倫のお話だった。R18ギリギリの作品だった。18歳を迎えたら、すぐにR18を書きたいそうだ。  許されない恋。だからこそ燃え上がる。金も地位もありモテモテの男が、妻よりも自分を熱烈に求め、愛してくれる。そんなシチュエーションの物語は、多くの人の心を鷲掴みにするのだろう。そう言えば、総合ランキングで上位の方々の作品は、背徳ものか、ハーレクイーンのような甘々ラブのものが多い。  有栖は背徳ものは苦手な上、溺愛だけの甘々も苦手だった。
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