第3話 弱肉強食な現実

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 自分の作品は読まれない訳だ。読者様が求めるものを意識していないから。それでも、実力があればどんな作品も読めれるのだろうけれど。  彼女のその他の作品も、江戸時代だったり、明治時代だったりと全部で20作品ほどあったが、そのどれもが共通のテーマだった。そして閲覧数も☆も0が6桁ついていた。 一番少ないものでも☆5桁。  明らかに住む世界が違う。 読ませて頂いた作品には☆をつけた。読み逃げは失礼だし、読ませて頂いたお礼も込めて。彼女は一度だけ有栖のサイトに訪問し、更新したばかりの作品を読んでくれたようだ。☆はされ無かった。  そう言えば、彼女は言っていた。☆は自分自身が本当に良いと思えるものだけに投げる質だ、と。クリエイター同士の相互ファン登録もしないらしい。ファン登録も、自分が素晴らしい、と思う方以外とはしないそうだ。 ……と言う事は、私の作品はやはり駄作だったか。どうもすみませんでした。お手数おかけして申し訳ございません、と苦笑せざるを得ない。  有栖も別にお返しの☆がを期待している訳では無い。人それぞれ、いろんな考え方があって良いと思う。有栖はたまに、ごくたまに他のクリエイターから☆を頂くと、気づいたらすぐにお返しに、しっかりと拝読して☆を投げに行く。  人気作家ともなると、自分が良いと思う人しか☆は投げないし、ファン登録もしません。と、プロフィールにしっかり明記できるくらいの強さと自信が必要なのだろう。それにあれだけの人気だ。全ての人に一々反応していたらアッという間に燃え尽きてしまうだろうし。  ある時、部活を終えて最寄り駅まで一緒に帰った時、 「もし七夕にお願いを!てお題で短編をかけ、と言われたらどんなものを思い浮かべる?」  と翔子は聞いて来た。 ……あぁ、あのお題か……  と感じつつも何の気無しに 「あぁ、例えば小公女セーラが夜空にお願いしたら、とか面白そうかも!」  と答えた。何故か嬉しそうに目を輝かせた翔子は 「じゃぁさ、新作で何か新しい恋愛モノ書くとしたら何を書きたい?」  と聞いてくる。続いて何の気無しに 「うーん、日本神話の神々の恋話とか……」  と答えた。何故か嬉しそうな翔子が気になった。これらの話は、実は有栖が既に書き始めているものだった。まだ冒頭のシーンだけだが。例によって、☆と閲覧者は尚樹だけである。
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