第3話 弱肉強食な現実

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 まさか自分の駄作ネタを、人気作家がそのまま使うとは誰が思うであろうか? 帰宅してその夜…… 「さぁ!無敵のアリスちゃんの時間だよー!」  とウキウキしながら『アスハキミガスター』サイトを開く。すると、画面の左端に『人気急上昇注目作品』として、天織姫の作品が二つもピックアップされていた。  けれども、どこかで聞いたような作品だ、はて??? サイトは、☆が50、100、200、500…とキリが良いところで達成すると、すぐに『人気急上昇注目作品』として画面に流れるようになっている。埋もれた良作を少しでも減らす為だ。これだけ編集部も忙しい中工夫してくださっているのだ。やはり日の目を見ないのは、それなりの作品なのだろう。  いや!今は暗くなっている場合では無い!今、確かに見過ごせない二作品を見たのだ。 慌てて画面を凝視する。 『日本神話の神様の恋バナ』☆50達成! 『小公女は星に願う』☆100達成! ……つい3時間前に、私が話したネタじゃないかーーーーーい!!!……  瞬間的に、 「人気作家の癖に!人様のアイデアからパクッてるんじゃねーよ!!!」  と怒りのあまり叫び声をあげそうになる。それは至って正当な怒りに思えた。だが、次の瞬間、我が作品を振り返った。 『日本の神様の恋事情』☆11 『小公女☆星に願いを』☆12  始めたのは尚樹が投げた☆の数だ。つまり11日前、12日前。人気作家様が書くとこうも歴然の差が出るのか。それともやはり内容が素晴らしいのだろうか?  思わず作品を読んで見たくなる。が、辞めた。内容がどうあれ、イライラするのは分かりきった事だったからだ。そのかわり、自分の二作品を非公開に設定した。  もう、この二作はお蔵入りだ。永遠に非公開。ただでさえ日陰なのに。このままでは、誰かが何かの拍子でこの二作品を見た時、 「盗作」扱いされかねない……。  何気ない会話でパクられた。その時は二人だけ。証明する人はいない。例えいたにしても、不人気駄作なアマチュア作家の事など、誰が擁護してくれるだろう?  さすがに、その日は「無敵のアリス」にはなれず、泣きながら寝た。 天織姫の『小公女は星に願う』がサイト内コンテストで優秀作品と選ばれていたのだ。 賞金が出ない賞なのがまだ救いだ。そして『日本神話の神様の恋バナ』は、出版社協賛の大きなコンテストに出すらしい。
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