第4話 つ、ついに! 中二病発病?……かも。

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 7月初め、暑い。まだ梅雨は明けないが。今からこの暑さでは真夏が思いやられる。 可哀想に。紫陽花は見頃を迎えぬまま、ドライフラワーと化してしまっているものが何と多い事か。 ……自分も、こんな感じで一生を終えるんだろうな……  場所によっては、生き生きと咲き誇る紫陽花もある中、有栖はそんな風に感じてクスリと笑った。夏川翔子の件から、約一か月が過ぎた。    あれ以来、翔子こと天織姫の事を密かに『パクリ作家』と呼ぶ事にした。そして自分のニックネームを、アリスから『無敵のアリス』に改名した。完全に開き直って自分だけの世界を創ろう! と腹を括ったのだ。尚樹くらいしか真剣に読む人はいないし、誰からも注目されないのだから。  今までもそうしてきたつもりだったが、心のどこかでいつか自分も、もしかしたら日の目を浴びる日が……という、捨てきれない夢があったことに気付いた。  だからもう、こんな感じだ。 「え?賞?何ソレ?美味しいの?」  パクリ作家の件は、尚樹には相当ショックだったらしい。確かに、日の目しか見たことが無い人には、 「まさか! そんな事まかり通る訳ないじゃん! 今著作権とか盗作とかスゴク厳しい時代なのに!」  と感じるだろう。実際の話はそうである。だがそれは、パクられた方が著名だったり 誰もが認める実力家だった場合に当てはまる。光があれば当然影も出来る。強い光が当たれば当たるほど、影もまた濃くなるのだ。これは、何も小説や絵などクリエイティブな世界の話だけでは無い。どの世界でもそれは同じだ。覚えていて欲しい。華々しく活躍する人たちがいる一方で、ひっそりと涙に耐え、日陰に生きている人もいるということを。  尚樹は光。私は影。恐らく、そんな役割で生まれてきたのだろう。 有栖はそう結論づけていた。  一通り回想が終わると、大きく伸びをした。そして木陰のベンチに腰を下ろす。ここは春には桜やチューリップ、夏には紫陽花や薔薇など、四季折々の花々が楽しめるちょっとした森林公園になっている。  そこは犬の散歩をする人や、乳母車に赤ちゃんを寝かせて散歩するお母さん等人々の憩いの場になっている。    真夏でもそこは、それほど気温があがらないので居心地が良いのだ。自宅から徒歩10分の場所にあるので、自由に妄想を楽しんだり、新作の構想を練る時はよくそこを利用している。
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