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今日は土曜日。部活から帰ってすぐにここに来た。なんとなく植物に囲まれたくなったのだ。有栖が今腰かけている場所は『紫陽花の小道』と名付けられた場所だ。白樺の木に囲まれた一角で、有栖のお気に入りの場所の一つだ。
「中世ヨーロッパのお姫様になろうかなぁ。でも宮廷魔導士もいいなぁ。そして、超イケメンな王子様か、騎士様と恋に落ちて……。あ、でも魔術師との恋も捨て難いなぁ」
有栖はイマジネーションの翼を広げ、異世界へと旅立つ。
…サワサワサワ…
不意に、爽やかな風が吹き抜け、有栖の髪を撫でる。
この梅雨時に、珍しい程爽やかな風だ。時期的には言わないのだが、風薫る、とはこんな感触だろうか?
有栖は携帯をバッグから取り出すと、『アスハキミガスター』の画面を開いた。
…サワサワサワ……サワサワサワ…
風が木々の葉を優しく揺らす。紫陽花や薔薇の花を、優しく撫でて行く。そして有栖をそっと包み込むように優しくそよいだ。有栖は思いついた作品の内容を入力し始める。
☆中世ヨーロッパ風…創作するので言い切らずに〇〇風。
☆精霊達と人々は共存していた。
☆お城に住む美しき姫(実は私…(*´艸`*)…)治癒と繁栄をもたらす力を持つ(ありがちだなぁ、要熟考)為、姫を手に入れようと各国の王や腕に覚えある騎士や魔術師等が後を絶たない(て、照れる)
プラチナブロンドの波打つ長い髪。深海のように深い青い目。(プラチナブロンド、一度はなってみたいんだよね。金髪や亜麻色もいいけど、今回はこれで)
☆姫に忠誠を誓う騎士。美丈夫(^^♪ 魔術の心得もある。ダークブラウンの短髪にエメラルドの瞳。
☆〇〇王国の王子。姫の許婚(*´艸`*) 剣術・魔術の心得あり。金髪碧眼♪
…サワサワサワ……サワサワサワ…
心持ち強めに、風は有栖を包み込む。
「とりあえず、主要人物だけ、と。名前はどうしようかなー」
…サワサワサワ……サワサワサワ……サワサワサワ……サワサワサワ…
風は有栖の耳元で語りかける。あまりの心地良さに、思わず目を閉じる。
…サワサワサワ……サワサワサワ…
……よく、頑張ってきたね……
…サワサワサワ……サワサワサワ…
……僕はずっと君を探していたんだ……
(あー、なんだろう? なんだか心地よい風の音が、私を励ます声に聞こえる)
有栖は椅子の背もたれに背中を預け、しばらく心地良い風に身を任せる事にした。
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