第1話 神様は不公平

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「えー? 何なに姉ちゃん、小説投稿サイト? 何ソレ面白そう! 俺も登録するー」  尚樹はそう言って、早速携帯で小説投稿サイト『アスハキミガスター』を検索し始めた。彼の名は一条尚樹(いちじょうなおき)16歳、高1。この物語のヒロイン、有栖(ありす)の弟である。 「はいはい、好きにすれば?」  有栖は弟に微笑んだ。 (弟の事だから、小説投稿したらあっという間に大人気になったりして…)  と感じながら。 (それにしてもつくづく、神様って不公平だと思うわ)  有栖は心の中で苦笑した。  一条有栖は普通の高校の普通科に通う高校2年生、17歳だ。彼女の通う高校は、学力は中間よりも少し上というレベル。まぁ、何処の地域にもよくある高校だ。弟の通う高校は某有名な進学校。弟とはまず、学力に雲泥の差がある。  続いて見た目だ。テニス部に所属している尚樹は一言で言えば精悍なハンサムと言えよう。身長178cm。まだまだ成長するであろう。小麦色の肌に覆われた細みの筋肉質の体型。面長、黒髪短髪、整った眉、高く形の良い鼻。形の良い唇。漆黒の長い睫毛に囲まれた褐色の瞳は、涼やかなアーモンド型だ。情熱的な輝きと冷静な知性の輝きを併せ持つ、不思議と惹き付けられる瞳である。  半袖の白いワイシャツ、黒のパンツという至ってシンプルな制服姿が、思春期という不安定で多感な年頃を反映し、危うい魅力を発している。  これで、勉強もテニスもトップクラス。親しみ易く謙虚で誠実、ときたら、モテない訳がないのである。  されど、可愛い弟なのだ。弟はまるでシスコンか?と思うくらい「姉ちゃん、姉ちゃん」と何かと構って貰いに来る。何をやっても平均的で平凡な自分。何をやっても非凡な弟。劣等感を感じない日は無かったが、その反面自慢の弟でもあった。
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