第1話 神様は不公平

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 かくいう我がヒロインは、ちょっと癖のある黒髪を、顎のラインで切り揃えたボブヘア。色白で身長153cmと割と小柄。ふっくらした卵型の顔の輪郭。ふっくら柔らかなピンクの唇。高くはないが上品な鼻。黒く長い睫毛に囲まれた丸くて大きな鳶色の瞳。  シンプルな半袖の白いブラウス、首元にワインカラーのネクタイ。典型的なバーバリーのプリーツスカートという制服姿がよく似合っている。  特別に美人でも可愛い訳でもないが、元気でキュートな女子高生、と言う感じである。 つまり、どこにでもいる平凡な女子高生なのだ。  彼女の所属する部活は演劇部。キャスト志望ではあるが、まだ一度も、台詞のある役柄を貰った事はない。例えば村人A、と言う名前すらないその他大勢のエキストラの経験ばかりが増えて行く。まるで自分の人生を象徴しているようだ、と有栖はしみじみと思うのだった。  とは言っても、誰からも何も期待されない分非常に気楽だった。誰からも何も期待されない為、予想されていた以上の出来だと大げさなくらい褒められたり。 「凡人こそ最強!」  と言うセリフがあるが、まさにそうだと思う。なんだかんだと、世の中のほとんどは凡人で埋め尽くされ、そして埋もれていくのだ。有栖は既に割切っていた。だから週四の演劇部も、残ってまで練習する必要もなく、終わったらすぐに帰宅。  実に気楽だった。そんな有栖には、唯一夢中になれる趣味がある。それは「小説投稿サイト『アスハキミガスター』」にLoveストーリーを投稿する事だ。  幼い頃から空想の世界で遊ぶのが大好きだった。そして小・中・高とも、作文だけは褒められてきた。手放しで褒められた経験がほとんど無かった有栖は、本当に嬉しかった。 だから、小説家になれたらな、と秘かに夢を描いていた。  ある時たまたまつけたテレビで、「小説投稿サイト」なるものが存在し、誰でも無料で投稿できる事を知る。それで登録したのが『アスハキミガスター』だ。  高校に入学したばかりの頃だ。7月現在で1年と3カ月になる。少しは頭角を現すかも?と淡い期待を抱いていた。 しかし、すぐに現実を知った。
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