神様の気まぐれ 「アリス・革命」

第1話 神様は不公平

　サイト内では頻繁にコンテストが開催され、張り切って応募し続けるものの、今に至るまで一度も賞どころか入選すらした事もなく。また、編集部では、閲覧数や作品の感想レビュー等関係無く優れた作品を選び、特集を組んでクリエイターを応援するシステムも充実しているのだが、有栖は今に至るまで一度も選ばれた事は無かった。

　クリエーター同士仲良くなったり繋がりも出来ていく。仲間達は相次いで特集に選ばれたり、コンテストで賞を取ったりして次々とスポットライトを浴びていく。

　つまりは有栖は、秘かに得意だと思っていた分野でも平凡。その他大勢のエキストラだったのである。

｢まぁ、そんなもんだよね｣

　と有栖は苦笑した。同時に開き直って趣味だと割り切って書く事にした。一方尚樹は、有栖がある時から、ほぼ毎日パソコン、或いは携帯に夢中になって、自分を構ってくれなくなった事に、秘かに不満を覚えていた。

……姉ちゃん、何だよ？サイト内で彼氏でも出来たんかよ？……

　と寂しく感じながらも、姉を見守ろうとしていた。だが、どうやら画面の向こう側の相手は、生身の男では無いらしい。そう気づいた彼は、今を遡ること2カ月ほど前……。姉が夢中になっているモノを突き止めたのだ。興味を持った彼は、早速携帯で検索。
『スペランツァ』に登録したのだった。

　有栖は先日、編集部が選ぶ2017年前半ルーキー特集なるものに尚樹が選ばれた事を知る。登録して約2カ月。弟・尚樹は、既に注目の人気作家の一人となりつつあった。

　サイト内では、ファン登録を始め作品を読んだ人が挟める栞や、その作品に☆マークを押す事で応援できたり、感想レビューを書いたりして作品や作家自身を応援するシステムが充実している。

　尚樹は2018年3月現在、3作品をアップ。アクセスはそのどれもが1500以上。応援☆マークはどれも1000以上。ファン登録は308人。感想レビュー20以上。3作品ともジャンル別総合ランキング5位以内。

　有栖は1年3カ月。８作品アップ。内３作完結。アクセスはどれも100以下。☆50以下。ファン登録は12人。アクセス、☆、ファン……そのどれもがクリエイター同士の相互によるものだった。ファンの内の一人、Naokiは、弟の尚樹である。有栖はアリスで登録していた。