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「ねぇ、見て!明彦先輩、カッコイイよねー!」
昼休み。何やら教室の女子が5.6人黄色い声を上げる。中山明彦、高3。生徒会長だ。
長身スリム、鳶色の髪の短髪。彫の深い顔立ち。小麦色の肌。明るい茶色の瞳。日本人離れしたイケメンである。
頭脳明晰、文部両道。このごく平凡な高校にも、勿論超がつく優秀な方々は存在する。
女子が騒ぐのも無理は無い。
どうやら、何かの用事で校庭を歩いているらしい。
「でも、ラブラブの彼女居るんでしょ?」
「なんか、噂によると他校の二年で。モデルの子らしいよ!」
「えー、じゃぁ叶わないね」
女子達は声を潜める。
………ていうか、あれだけの美形。文部両道。フリーだと思える事にビックリだ。フリーなら付き合える自信があるのか……
内心、有栖は秘かに突っ込みを入れてしまう。
数多いる優秀なる美しき花々から、自分を選んで貰えると思う、その根拠無き自信がある意味羨ましかった。
早く、小説の続きが書きたい、そう思った。
キーンコーンカーンコーン…
また、退屈な授業が始まる事を、チャイムが知らせる。お昼を食べた後は、特に眠くなりがちだ。慌てて生徒達が席に戻って来る。有栖は数学の準備をし始めた。
そして何となく、午後の授業が過ぎていく。
放課後は演劇部に顔を出す。今日は秋の文化祭に向けての演目とレギュラーが発表だ。
……と言っても、照明や音響等敢えて裏方を希望しない限り、セリフは無くとも、全員が舞台には立てるようになっているのだが。
何やら、全員が舞台に立てないと選ばればかった生徒の父兄からクレームが入るらしいのだ。
「うちの優秀な子が舞台に立てないなんて! これは差別です、苛めです! 訴えます!」
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