光の中へ

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 あたたかくて居心地の良い部屋で、たくさんの仲間たちと気儘(きまま)に時を過ごしていたような記憶がある。  ──突然の衝撃があった。  一瞬にして、吸い込まれるように仲間たちと共に別の空間へと放出された。  阿鼻叫喚(あびきょうかん)と化した周囲の状況に、ただただ(おび)えることしかできなかった。  仲間たちはそれぞれ何か訳のわからない悲鳴や叫び声を上げながらも、泳ぐように互いをかき分けてどこかへ向かおうとしている。  自分も行かなければ。  怪我をして動けなくなっている仲間を助けようともせず、それどころか彼らを踏みつけるようにして大勢の行く方向へ、必死にもがき進んでいく。  ──どれくらいの時間が経っただろうか。からだが重い。まわりを見ると皆も同じように動きが鈍い。ドロドロの液体にまみれた(しかばね)があちこちに転がっている。  ああなりたくはない。  ボクはあんな風に()ちていくのはイヤだ。残り少ない力を振り絞って進んだ。  (しばら)くすると、不思議なニオイがどこからか漂ってくるのに気がついた。それは、昔から知っているような、どこか(なつ)かしい感覚を与える。  行かなければ。ボクはそのニオイの元へ行かなければならない。
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