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「あったぞ海斗!入口!」
「だから大きい声で言うなって。誰かに見つかったら秘密基地じゃなくなっちゃうんだぞ」
公園の隅にある茂みをかき分けて叫ぶ拓海を、海斗が注意する。
拓海は悪びれる様子もなく茂みに潜り込んだ。
フェンスが破れて出来た穴に身をねじ込むと、その先には小さな部屋ほどの空間が広がっていた。
「よし、海斗。まず何からする?」
「まずは草を取っちゃおう」
「えー草が生えてたほうが寝転んだ時気持ちいいぞ?」
「大きくて邪魔な草だけだよ。短いのは気持ちいいから残しておく」
「了解、隊長!」
拓海はテレビで見た大人の真似をして、了解のポーズをとった。
海斗に言われたとおり、目立つ草だけを手に取って抜き始める。
しばしぽかんと立ち尽くした海斗だったが、直ぐに我に返って拓海の手伝いをした。
「ねぇ、僕が隊長やっていいの?」
草を抜きながら、拓海に問う海斗。
拓海の方が年上で、隊長は年長者が行うものだと思っていたからだ。
しかし、拓海はにっと白い歯を見せて笑った。
「当たり前じゃん。海斗の方が頭良いもん。隊長ってのは一番頭がいい奴がなるんだぜ」
「ふーん」
「あ、でもおれ、かけ算できるようになったんだぞ!」
「かけ算?何それ?」
「それは教えられねえな。教えたら海斗、すぐ覚えちゃうだろ?」
得意げに学校の話をする拓海が、海斗は好きだった。
なぜか友達と遊ぶ話は聞いたことがなかったが、こんなことを習った、あんな勉強をしたと話す拓海を見て、海斗は学校というものを想像することが楽しくて仕方なかった。
「いいなぁ。僕も早く学校行きたいなぁ」
「6歳になったら、学校に行けるんだ。そしたら、俺が学校まで連れてってやるよ」
「うん!約束だぞ」
そう言って、二人で作った秘密基地で指切りをした。
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