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つまり、最初に来た女性が恐らくその有名漫画家という人で、
彼女が購入した同人誌の感想をブログに載せたことで、興味を持った美澄ファンが集まってきた、と。
「……東京は恐ろしい」
「ん?お前東京育ちじゃなかったっけ?」
思わず田舎者のようなセリフをつぶやくと、友人が顔を覗き込んでくる。
「でもすげえな。美澄先生が来てたのかー。お前の変わりように驚いてちゃんと顔見てなかったなあ。
なあ、美人だった?」
「知らん。興味ない」
「えー?お前絶対人生損してるよ。女性の魅力がわからないなんて、もったいない」
何やらブツブツ言っている友人を残し、片付けを終えた海斗はブースを出た。
そんなものは、わからなくていい。
今はまだ。
そんなものが分かってしまったら、百合乃を落とせなくなる。
だから今は、まだ必要ない。
「(……さっきの子、高校生くらいだったか)」
ふと、先ほど会った少女が脳裏に蘇った。
東京慣れした大人の女性や、着飾った女性に興味はない。
だが、純粋で曇りのない顔で笑える彼女のような女性なら、嫌いではない。
むしろ、またどこかで会えるだろうかと期待さえしている。
らしくない、と海斗は苦笑を漏らした。
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