第1章:海斗・拓海 編

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ただ文章を追っているだけなのに、少年が傷つけられるのと同じ場所が痛むように錯覚してしまう。 そうして読み終わるといてもたってもいられず、時間は既に日を跨いでいることにも気づかずに部屋を飛び出した。 風呂から上がり寝支度を始めている拓海の部屋へ飛び込むと、一瞬驚きの表情を見せた親友はふ、と頬の筋肉を緩めた。 「なんつー顔してんだ」 「……どんな顔してる?」 今自分がどんな顔をしているのかわからない。 ただ、鼓動が煩いほど跳ね上がっていて、落ち着こうにも息が上がって呼吸も上手くできない。 こんなに胸がざわついたことなんて、久しくなかった。 恐らく幼少時代、拓海が引っ越す前が最後だ。 この感情は、そう、すごく 「興奮してる顔」 「新作、読んだ。今までのどれよりも、拓海らしいというか……才能が、フルに活かされてる感じがした」 「そりゃどうも」 「それで」 そう。 こんな感想を言うために来たのではない。 もっと、拓海に聞いて欲しいことがあって。 荒れる呼吸を落ち着かせ、拓海の思いが綴られた原稿を眺める。 握り締めた手からはどうしても力が抜けなかった。 「この本の表紙を描きたい」
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