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話がしたいと言って百合乃に呼び出され、いつも待ち合わせ場所にしている公園に向かった。
既に到着していた百合乃と並んでベンチに座り、他愛もない話を繰り返す。
一瞬会話が途切れ、互いに口を閉じた。
数秒空けて、百合乃の息を吸う音が聞こえた。
「海斗さん。私たちって、付き合い始めてもうすぐ1年になるじゃないですか」
「ああ、そうだな。もうそんな時期か」
「そろそろ、いいと思いませんか?」
「……何が?」
彼女が何を言いたいかなんてとっくにわかっている。
わかっていて、しらばっくれてみる。
「私は、もうずっと待ってるんです。なのに海斗さんは、キス以上の事をしてくれない」
「……」
「私、不安なんです。海斗さんが、本当に私を愛してくれているのか、」
「セックスしなきゃ、俺の愛がわからないのか」
「いえ、あの……」
「そうか……これまでたくさんの時間を百合乃にかけてきたのに。俺は信用されていなかったんだな」
悲しそうに目を細めて、百合乃を見据える。
言葉を紡ぎながら、こみ上げてくる感情が顔に出ないように奥歯を噛み締めた。
不安になって当然だ。
愛がわからなくて当然だ。
だって、ここに愛なんて存在しないんだから。
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