第1章:海斗・拓海 編

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話がしたいと言って百合乃に呼び出され、いつも待ち合わせ場所にしている公園に向かった。 既に到着していた百合乃と並んでベンチに座り、他愛もない話を繰り返す。 一瞬会話が途切れ、互いに口を閉じた。 数秒空けて、百合乃の息を吸う音が聞こえた。 「海斗さん。私たちって、付き合い始めてもうすぐ1年になるじゃないですか」 「ああ、そうだな。もうそんな時期か」 「そろそろ、いいと思いませんか?」 「……何が?」 彼女が何を言いたいかなんてとっくにわかっている。 わかっていて、しらばっくれてみる。 「私は、もうずっと待ってるんです。なのに海斗さんは、キス以上の事をしてくれない」 「……」 「私、不安なんです。海斗さんが、本当に私を愛してくれているのか、」 「セックスしなきゃ、俺の愛がわからないのか」 「いえ、あの……」 「そうか……これまでたくさんの時間を百合乃にかけてきたのに。俺は信用されていなかったんだな」 悲しそうに目を細めて、百合乃を見据える。 言葉を紡ぎながら、こみ上げてくる感情が顔に出ないように奥歯を噛み締めた。 不安になって当然だ。 愛がわからなくて当然だ。 だって、ここに愛なんて存在しないんだから。
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