第1章:海斗・拓海 編

91/99
前へ
/102ページ
次へ
「……今日は帰るよ」 「あの、待ってください!ごめんなさい、私、過ぎたことを言いました。海斗さんを悲しませるつもりなんてなくて、ただ……」 ベンチから立ち上がる海斗の腕を掴む、彼女の手が震えている。 可哀想に。 本当に俺のことを愛しているんだな。 「ただ、何?」 「……っ、怖くて……海斗さんが、どこかに行ってしまいそうで……いっそ、妊娠でもしてしまえば、結婚できるのに……」 最後の一言は消えそうで、独り言に近かった。 思わず溢れてしまった笑みは、幸い俯いている百合乃には見えていない。 この時を、ずっと待っていた。 さあ、 壊れろ。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加