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「みーつけたっ」
桜舞う季節。
新入生をサークルに勧誘する声が四方から飛び交うキャンパスで、海斗は一人の男に行方を阻まれた。
パーマのかかった金髪。両耳に4つ、じゃらじゃらとぶら下がる重そうなピアス。奇抜な色のカラーコンタクト。首元で揺れるチェーンのネックレス。
下から覗き込む、人を見下したような目。
「ふーん?あーちゃんの言ってた通り、本当に父親にそっくりだねー」
この男を、知っている。
「……柿原財閥の御子息がこんな所で護衛もつけずに何をしている。視察か?」
「それは父親の仕事だよー。ほんと、あーちゃんの言ってた通り。口調と性格は父親とは正反対だね。ねね、その感じって誰に似たの?」
悪びれる様子もなく、自分のペースで話を進めていく男は柿原千秋とか言ったか。
この大学を所有する資産家の息子で、海斗の父親が専属で執事を務めている。
何でも面白いものと自由が好きとかで、父はよくこの男にまかれているらしい。
何度か見かけたことはあるが、容姿といい喋り方といい父に聞く性格といい。
海斗には“いけ好かない奴”という印象が根深く取り付いている。
「何の用だ。ただの暇つぶしなら帰るぞ」
「あはは。今俺が一人で良かったねえ。護衛がいたらおまえ、怒られてたよ。『千秋様に失礼な口をきくな!』って。あぁ心配しないで。俺は心が広いからそんな小さいことは許してあげる」
「……要件は何だ」
「あ、そうだった」
忘れるとこだった、と零した千秋は、に、と白い歯を見せて笑い、海斗を見据えた。
「お前に、俺と同居する権利を与えよう」
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