第1章 回顧

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 珍しく老人たちの姿がない。普段ゲートボール場と化すこの場所は、いつもより広く感じる。あるのは、ブランコと、滑り台。それに、ベンチ三基。その一つの半分に俺はいた。  何となく空を見る。雲一つないのに、それが一面覆い尽くしているかのように、限りなく白に近い青空がそびえ立つ。乾いた風が軽やかな音をたてて去っていく。日差しはあるけど、少し肌寒い。誰もいない三月の昼間の公園は平穏と閑寂が共存する。  静かだ。  数日前、突然あいつからの連絡が入った。  中学を卒業してから、あいつとは一度も連絡をとっていなかった。会うこともなかった。 「久しぶりに二人で話したい」あいつからのDMには驚いた。苦労して俺のツイッターのアカウントを探し出したのだろう。あいつとは連絡先を交換していなかった。する必要がなかったから。  あいつとの毎日の会話は、中学卒業と同時に終わりを告げた。通学中に会うこともなかった。相手の家に行く勇気もなかった。……どうせすぐ会うことになる。そう思っていた。  偶然出くわす登下校。  無意識に合う歩幅と速度。  自然に呼び合うファーストネーム。  なぜか落ち着く左横。  全てが懐かしい記憶の彼方。  気付けば、卒業式の三日後。お互いの高校生活はほとんど知らない。  あいつの三年間はどんなものだったのだろうか。  俺の三年間はこれで良かったのだろうか。
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