第12章

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 何度か触れるだけのキスを繰り返していたら、またどんどんと愛しい気持ちが溢れてきた。もっと深くほしいと思って身を乗り出すと、あろうことか『ぐーっ』と腹が鳴った。その音は当然霧生さんの耳にも届いたのだろう。ぴたりと動きが止まった。 「あ……」  折角いい雰囲気だったのに、空気読めよと自分の腹に説教してやりたい。 「お腹、空いた? 何か食べに行く?」  くすくすと笑う霧生さん。すっかり今までの甘い空気は消え失せてしまった。 「霧生さん、怪我はもう大丈夫なんですか?」  今まで散々激しい運動させておいてこの期に及んで、という気もするがまだ少しくっついていちゃいちゃすることに未練もある。 「近所に美味い中華料理の店があるんだけど」 「行きます!」  条件反射的に答えてから、「しまった」と口を押さえたが時すでに遅し。案の定、霧生さんはまた肩を揺らして笑いを堪えている。 「笑いすぎですよ」  恨めしげに睨む俺を霧生さんはふわりと抱きしめた。 「遠藤君、愛してる」  やっぱり、いつも驚かせてばかりいるのは霧生さんのほうだ。  霧生さんらしくド直球で、なんの飾りもない言葉だけど、その言葉を聞いた瞬間に俺のくすんでいた世界は暖かい色へとその姿を変えた。 End.
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