第1章

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第1章

「やっと着いた……」  まだ三月だというのに、汗ばむような春の陽気。駅前のロータリーに面した雑居ビルを見上げて俺は大きなため息をついた。  自転車を歩道の脇に寄せチェーンをかけ、一階に大手都市銀行が入ったそのビルの重いガラス扉を押し開けロビーに入る。ひんやりとした大理石の廊下を進み、エレベーターに乗り込むと四階のボタンを押す。  少しの上昇の後、開いた扉の先は少し消毒薬の匂いがした。
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