第12章

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「霧生さんが事故にあった日です。あの時、霧生さん俺の頭を大丈夫だって撫でてくれましたよね。その感覚が親父を助けてくれた先生と重なって、アルバム確認したら霧生さん写ってるし……自分の尊敬する人の顔を忘れた俺も大概ですけど」  霧生さんはさらに、はぁぁっと大きな溜め息をついた。 「君が子供の頃、俺のことを忘れるよう暗示をかけていたんだ」 「え、じゃあ俺が忘れてたわけじゃなくて……? でも、どうして?」 「そこまでは思い出してない?」  俺は記憶の糸をなんとか手繰り寄せようとしたが、どうしても手術室の前で頭を撫でられた映像しかでてこなかった。しかも医師の顔はもやがかかったように不鮮明だ。その後、親父は長い間入院していたはずなのにその記憶も全く抜け落ちている。今まで、あの手術室前での出来事がインパクトが強すぎて気にも留めていなかったけども。  霧生さんは俺の指をもてあそびながらぽつりぽつりと語りだした。     
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