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「君があまりにも美味しすぎるから、がっついてしまって申し訳なかった」
今までの少し横柄な態度から急にしおらしくされると、こっちもキツい事を言い過ぎたかもしれないと、ちょっと不安になる。それにしても本当に話が通じているのかどうか、疑問は残るのだが。
「ま、まぁ反省してくれたんならいいですけど。誰しも魔が差すってことありますし……」
「お詫びに何かおごるよ」
――おごり!?
なんと魅力的な言葉。魔力さえ潜んでいるのではないかというほど俺を強烈に引き寄せる。しかし、俺の理性はすんでのところでストップをかけた。仮にもこいつは俺のファーストキッスを奪った憎むべきヤツなんだ。そんなヤツの誘いにおめおめと乗るわけにはいかない。
「お言葉は非常にありがたいんですが……」
「んー、そうだな。精つけなきゃいけないし、焼肉とかどうだろう?」
「ついて行きます、どこまででも」
どうも食べ物で俺を手懐けようとしているのではないかと言う魂胆が見え隠れするのだが、焼肉という言葉の前では何もかもが無力だ。
俺はちぎれんばかりに尻尾を振る子犬のように、ついて行くしかないのだ。
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