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「修平は?」
「さぁ? いつもの通りじゃない?」
次男の修平は思春期真っ只中の高校二年生。最近やたらとプライバシーを主張するようになったが、いかんせん畳の部屋が二間あるだけの我が家ではそれも叶わぬ夢。諦めて、二段ベッドの自分の領域をカーテンで囲い、閉じこもって音楽を聴いてばかりいる。以前はぶーぶー文句を言いつつも家事の手伝いをそれなりにしてくれていたのに、扱いが難しくなってきた。
俺は一つ溜め息をつくと、しつこくまとわりついてくる弟どもを窘めつつマーボ豆腐ナスを作り始めた。あとはご飯とわかめスープで夕飯のできあがりだ。
「さぁ、食え!」
ちゃぶ台の上に皿を所狭しと並べ、弟達を席に着かせる。
まだごちゃごちゃと小競り合いを続けている双子に、相変わらず携帯をいじっている美咲。修平もぶすっと口をへの字に結んでいるが、自分のスペースから這い出してきた。我が家の食卓は戦争さながら、食うか食われるかの戦いだ。うかうかしていようものなら確実に食いっぱぐれるのだ。
「にーちゃん、今日は豪華だね!」
「あぁ、どんどん喰え」
「にーちゃんはいいの?」
「俺はいいんだ、バイト先で賄い出るし」
山ほど作ったマーボ豆腐ナスはみるみるうちに減っていく。俺は弟達の食いっぷりに満足しつつも、少しだけ良心の呵責を感じていた。
許せ、弟妹よ。にーちゃんはあと数時間後には焼肉をたらふく喰っているのだ。腹減らせておかなくてどうする。
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