第2章

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 駅前のごみごみした道を抜け幹線道路に出ると、十分ほど走ったところで店に到着した。小洒落た感じのビルで、一階が駐車場になっている。そこに車を停め、俺と霧生さんは階段を上がり二階の店内に入った。 「わぁ、すげ……」  店内は俺の想像していた焼肉店とは違い、なんだかとても高級そうな感じだ。インテリアは白を基調にまとめられており、さりげなく飾られているオブジェもセンスがいい。しかも、いくつかのテーブルでは先客たちが肉を焼いているというのに煙ひとつ上がっていない。  カルチャーショックを受けている俺を尻目に霧生さんは案内に出てきた店員に名前を告げている。どうやら予約をいれてあったようで、俺達は奥の座敷に案内された。 「なんでも好きなの頼んでくれていいから」  掘りごたつのようになっている座卓に向かい合わせに座ると、霧生さんがそう言ってくれた。早速、俺はうきうきとメニューを開いて、鼻血を噴きそうになった。  カルビ焼 一、六○○円  上カルビ焼 二、九○○円  壺漬カルビ焼 一、八○○円  ロース焼 一、三○○円  赤身上ロース焼 一、九○○円  タン塩焼 一、八○○円  ネギタン塩焼 二、○○○円  じょ、上カルビ一皿で我が家の一日分の食費まかなえそうな勢いなんですが!?  しかし、なんでも頼んでいいと言ってくれているのだし、第一、俺が霧生さんに遠慮しなくてはいけない理由がない。  喰って喰って喰いまくって、俺の唇を奪った代償がいかに大きいものであるか思い知らせてやるのだ。
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