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「いくら万年欠食児の俺といえども自分をそこまで貶めたくはありません。というか、男同士で何言ってるんですか、あなたは。そんだけカッコよかったら女には苦労しないんじゃないですか?」
「そうか、大学生ならコンパのひとつも行ったりしてるのかな?」
……どうも、この人と話すと論点がずれていく。
「いや、俺そういうの全然興味ないんで」
これは本当だ。時間もないし金もないってのも理由の一つだけども、俺は同世代のちゃらちゃらとしたやつらが男女に限らず苦手だ。親のすねかじって好き勝手な事して。俺とは無縁の世界だ。
「勉強一筋なんだ。そんなに医者になりたい?」
相変わらずの飛びっぷりはこの際置いておくとして、一つの疑問が急に浮かび上がってきた。
「なんで、俺が医者になりたいって知ってるんです? 俺、言いましたっけ?」
「あぁ、献血ルームで資料を見させてもらったから。そこに大学名も書いてあったよ」
そう言われて、霧生さんが問診コーナーで熱心にモニターを見ていた事を思い出した。個人情報の目的外使用だと言えなくもないが、霧生さんならそれくらい平気でやって当然だろう。今更いちいち文句を言ってみても始まらない。俺は諦めて会話を進めた。
「医者は、子供の頃からの夢なんです」
「やっぱり、収入がいいから?」
ちょっとカチンと来た。何も知らないくせにそんなふうに言われるのは心外だ。
「そりゃ、ウチ貧乏だから金はあるに越したことはないですけど」
霧生さんは、俺の話に興味がある、とでも言いたげに身をのりだすと、テーブルに両肘をつき手の甲の上に顎をのせ、俺のほうをじっと見た。
そんなことしてないで肉喰えよ、焦げてんじゃんよ、と思いつつ俺は話を続けた。
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