第3章

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 視線の先には焦げて炭化しつつある肉。  見てるだけじゃなく、とっとと網からあげてくれたらいいものを。 「そして実際その医師が言ったとおり、父は奇跡的にも助かったんです。あの人は父だけでなく、俺も、母も弟や妹も全部を救ってくれた」  あの、自分を撫でた手がそんな奇跡を起こした事を純粋に『すごい』と感じた。医者は患者の怪我や病気を治すだけじゃなくてその周囲にいる人たちをも不幸から救い出してくれるのだとその時知った。 「だから自分がどこまで追いつけるかはわからないけど、あの医師のようにいろんな人に安心を与えられるような存在になりたいと思ったんです」  俺はここまで言うと、炭化した肉を全部飯の上にのっけて一気にかきこんだ。医者になりたい理由を家族以外に話したのは初めてなので少し照れ臭い。
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