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「失礼しまーす」
「はい、そちらにかけてください」
扉替わりの白いカーテンをくぐるとそこには三十台前半と思われる白衣の男が座っていた。
少しウェーブのかかった髪は染めているのか明るめのブラウンで医者らしからぬ感じだ。
でも、ちらりとこちらに向けられた目は柔和ながらも知性的だし、低めの落ち着いた声が大人の男を印象付けている。
「お願いします」
俺はそう言うと、丸椅子に腰掛けプリントアウトした紙を差し出した。
「遠藤耕平くん、ね……」
「はい」
紙面に目をはしらせながら傍らに置かれた端末のキーボードを骨ばった男らしい指で叩いている。欧米人のように彫りの深い鼻筋のとおった横顔はこんな所で会ったのでなければ、モデルか俳優だと思ったことだろう。
その医者はモニターに視線をおとしたまま話を続けた。
「献血には足繁く通ってるみたいだね」
「えぇ、ここは初めてですけど。隣町の献血ルームにはよく通ってました」
「あぁ、そういえばあっち閉鎖になったんだっけ」
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