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「ちょっと残念だけど、信じてくれるなら許そう」
でも、目じりを少し下げていたずらな顔で笑っている人がそんな魔物だと言われても全然怖いとは思えなくて、むしろそうやって俺に秘密を打ち明けてくれることが嬉しかったりした。
俺って危機感なさすぎかもしれない。
「それでようやくわかりましたよ。なんで焼肉なんておごってくれるのかと思ったら。口止め料ってことなんですね」
その時ふと、先ほどの突拍子もない申し出の意味がわかった。
「あ、さっきの愛人の話もそーゆー意味ですか?」
「ん?」
「俺が血を提供して、霧生さんが食べ物を提供する。いわばギブアンドテイク。俺、え、えっちな事とかされるんじゃないかと思って断ったけど、それだったら別にいいですよ。献血とおんなじだし」
霧生さんは、きょとんとしている。大喜びしてくれるものだと思っていた俺は、肩透かしを食らった。
「んー……、まいっか。んじゃそういうことにしておこう」
「なんなんですか、その仕方なくしぶしぶ了承みたいな態度は。自分から頼んできたくせに、なんかあんまり嬉しくなさそうに見えますけど」
「あ、いや、嬉しいよ。すっごく。遠藤くんありがとう!」
ちょっとムッとした俺を宥めるように、わざとらしく愛想笑いしている。
なんなんだ一体。
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