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さらに言い募る米倉をとりあえず無視して、シリンダーから採血ホルダーを抜き、俺は小さく溜め息をついた。
注意深く注射針を腕から引き抜くと脱脂綿を押し当てる。よし、今度は成功だ。
「最近、うまいものいっぱい食ってるからかな」
あれ以来、霧生さんとは週に一度くらいのペースで会って、一緒に食事をしている。
毎回ごちそうにありつけるのももちろん嬉しいのだが食事の合間に他愛もない事――例えば俺の家族の誰某の失敗談とか大学での出来事とか最近のニュースとか――を語り合うのはとても楽しかった。
我ながら奇妙な関係だとは思うが俺は霧生さんと過ごす時間を手放せなくなっている。
帰り際には、どこかひと気のないところに車を停め、血を吸われるというのももちろん続いている。その後にキスというオプションも毎回ついてしまっているがなんとなくそれくらいはいいかな、と思ってしまっている。我ながら少し流され過ぎな気がしないでもない。
「そうなの? 恋人でもできたのかなぁって思ったんだけど」
「まっ、まさか! 有り得ないし!!」
あまりに素っ頓狂な声をあげたため採血に集中している周囲の学生を驚かせてしまった。
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