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やばい! と思ったときにはドサッと放り出されるようにベッドの上に横たえさせられていた。
霧生さんは俺の動きを封じるように上にのしかかり、両方の手首をまとめるとベッドに押さえつけた。
顔は穏やかに笑ったままで、空いた片方の手で器用に俺のシャツのボタンを外し始める。
「ま、待ってください! 俺の意志もたまには尊重してください!」
「遠藤くんに全然その気がないならしないけど、嫌悪感とかあんまないみたいだし、態度見てたら全くの拒絶ってわけでもなさそうだから。違う?」
「……っ!」
言葉に詰まってしまった。
どうしてこうも自信たっぷりに直球で勝負してくるんだ。
確かに霧生さんからもたらされる行為はどれも、気持ちがいいし嫌悪感も恐怖も感じない。キスにしても今までは血を吸われた後の、意識がぼんやりしている時を狙ってされるのを言い訳に利用して、自分の気持ちから目を背けていた。
結局は、食べ物に託けて気づかないフリをして、本当はこの人に会いたかっただけなんじゃないか。本当はこうなることを内心期待していたんじゃないのか。そんな風にさえ思えてきて、俺は混乱した。
だけど、心のどこかで「男同士だから」とか「これはやっちゃダメなことだ」と別の自分が囁く。「これ以上先に進んではいけない」と理性が働いているのも事実で。
自分でもどうしたいのかわからなくなってぐるぐる葛藤する俺に痺れをきらしたのか、唇が鎖骨にふわりと触れて、そのまま首に移動した。
「もし本当に嫌だと思うんだったら、本気で抵抗したらいい」
耳朶を軽く噛まれて、中を濡れた舌が這った。背中にぞくりと衝撃が走る。
「やっ、やめてくださ……」
「ダメ。それじゃ全然本気っぽくないし。……むしろ誘ってる感じだよ」
「誘ってなんか……!」
霧生さんの指が、唇が、何かを探るかのように俺の身体の上を這っていく。
「んぅ……、ん、ん……」
せめて声は出すまいと唇をかみ締めるが、あがる息と一緒に喉の奥から自分のものとは思えない甘い喘ぎが漏れる。
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