第7章

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「俺、帰ります!」 「ちょ、待って。体大丈夫なの? ツラくない?」  慌てて玄関に向かおうとする俺の腕を霧生さんがぐいっと掴む。振り返ると、心配そうな顔で俺を見ている。  あんまり気を遣われるとかえって恥ずかしくて全速力で逃げ出したくなるんですけど……。 「ちょっとダルいけど、家のこと放りっぱなしだし、バイトあるし……」  顔が赤くなるのを感じて俯きながらそう言うと、掴んだ腕をそのまま引き寄せられ、ぎゅっと抱きしめられてしまった。  ふわりと霧生さんの香りがして、息遣いを耳元に感じる。 「家とバイト先には二、三日戻らないって電話いれといたから心配いらない」  思わず甘い雰囲気に呑まれそうになったが、いろんな疑問がふつふつと浮かび上がり、がばっと霧生さんの腕の中から抜け出した。 「なんでウチとかバイト先の番号知ってるんですか?」 「遠藤くんのカバンの中の手帳見た。携帯あるんだから登録しておけばよかったのに」  プライバシーの侵害だが、まぁ、それくらいはこの際許そう。  携帯はもらった時に宣言したとおり、霧生さんの着信を受けるだけで誰の番号も登録していないし誰にも番号は教えていない。     
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