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結局、その後二人で最高級のすき焼きをつつき、腹いっぱいになるとまた二人でお互いの肌の温もりを確かめ合うようにベッドで抱き合って眠った。霧生さんは俺の体を気遣っているのか、片時も俺を離そうとはせず、なんだか新婚夫婦みたいでくすぐったくもあるけど、とても満ち足りていて穏やかな時間を過ごした。
翌朝、なおも霧生さんは俺をなんとか引きとめようとする素振りを見せたが、さすがに家に戻らないとまずい。
「別に一生の別れってわけじゃないんですから。またいつでも来ますよ」
「……そうだね」
捨てられた子犬のように寂しそうな目で「送っていく」と言う霧生さんの申し出を固辞し、後ろ髪ひかれながらもマンションを後にした。
これだけ甘えてもらえるということは少しは気を許してくれてるのかなと思えてなんだかくすぐったい。
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